アンゾフマトリクスとは
アンゾフマトリクスとは、企業がこれからどのように成長していくかを考えるための、とてもシンプルで分かりやすいフレームワーク(考え方の枠組み)です。ロシア出身の経営学者、イゴール・アンゾフ氏が提唱しました。会社が「今ある商品やサービス」を「今いるお客様」に売っていくのか、それとも「新しい商品」や「新しいお客様」を開拓していくのか、という選択肢を整理し、戦略を立てるのに使われます。
例えるなら、料理屋さんが「今あるメニュー(商品)」を「いつも来てくれるお客さん(市場)」に提供し続けるのか、それとも「新しいメニュー」を開発するのか、あるいは「これまで来なかった新しいお客さん」を呼び込むのか、といった戦略を考えるようなものです。このマトリクスを使うと、会社が進むべき方向性を4つのパターンに分けて、もれなく検討できます。
なぜ今、話題なの?
近年、ビジネスの世界は変化が激しく、新しい技術やサービスが次々と登場しています。そのため、企業はただ既存の事業を続けるだけでなく、常に新しい成長の機会を探し続ける必要があります。このような時代において、アンゾフマトリクスは、自社の現状を客観的に見つめ直し、将来の成長戦略をシンプルに考えるための有効なツールとして、再び注目されています。
特に、デジタル化の進展や顧客ニーズの多様化により、企業は「新しい市場」や「新しい製品」への挑戦を迫られる場面が増えています。例えば、これまで店舗で商品を販売していた企業がオンラインストアを始めるのも「新しい市場」への挑戦ですし、既存の商品にAI(人工知能)などの新技術を組み込んで新しい価値を生み出すのも「新しい製品」の開発と言えます。このように、変化に対応し、持続的に成長していくために、多くの企業がアンゾフマトリクスのような戦略ツールを活用しているのです。
どこで使われている?
アンゾフマトリクスは、特定の企業が「アンゾフマトリクスを使っています!」と公表することは少ないですが、その考え方は多くの企業の経営戦略や新規事業開発の裏側に息づいています。例えば、以下のような例が考えられます。
- トヨタ自動車: 既存の自動車販売に加え、電気自動車(EV)や自動運転技術 [blocked]の開発に力を入れています。これは、既存の市場(自動車ユーザー)に対し「新しい製品(EVや自動運転車)」を投入する戦略(製品開発)と、モビリティサービスという「新しい市場」を開拓する戦略(多角化)の両方に取り組んでいると言えます。
- 楽天グループ: 楽天市場という既存のEC(電子商取引)事業を基盤に、楽天モバイルで通信事業に参入したり、楽天ペイで決済サービスを提供したりしています。これは、既存の顧客基盤(市場)に対して「新しいサービス(製品)」を提供することで成長を図る「製品開発」や、全く異なる事業分野に進出する「多角化」の戦略を積極的に展開している例です。
- ユニクロ(ファーストリテイリング): 国内市場で確立したブランド力を背景に、海外市場(特にアジア)への出店を加速させています。これは、既存の製品(衣料品)を「新しい市場(海外)」に展開する「市場開拓」戦略の典型的な例です。
覚えておくポイント
アンゾフマトリクスは、ビジネスパーソンが会社の成長戦略を考える上で、いくつかの重要な視点を与えてくれます。
- 現状の事業を整理する: 自分の会社や部署が、今どの戦略(市場浸透、市場開拓、製品開発、多角化)に力を入れているのかを客観的に見つめ直すきっかけになります。漠然とした目標ではなく、具体的な成長の方向性を考えるのに役立ちます。
- 新しいアイデアのヒントにする: 新規事業や新商品の企画を考える際に、「既存のお客様に新しい商品を提案できないか?」「今ある商品を新しいお客様に届けられないか?」といった視点からアイデアを広げることができます。これにより、網羅的に成長の可能性を探れるでしょう。
- リスクとリターンを考える: 各戦略にはそれぞれ異なるリスクとリターンがあります。例えば、「市場浸透」は比較的リスクが低いですが成長も緩やか、「多角化」は大きな成長が見込める反面、リスクも高まります。このマトリクスを使うことで、挑戦しようとしている戦略がどのタイプに当てはまり、どのようなリスクがあるのかを事前に検討するのに役立ちます。